2013-08-27

レトロゲームでの縦画面シューティング移植について

今回は縦画面・縦スクロールシューティングの家庭用移植についてと、当時の事情を推測したうえで個人的な意見を書いてみたいと思います。

紫炎龍がなんかおかしい?
YouTubeに動画を上げようと録画前にそれなりのプレイを撮りたいためセガサターンの紫炎龍を練習していました。
紫炎龍とは縦画面・縦スクロールのシューティングです。

これをプレイしているとなんか画面に違和感を感じます。
横画面縦スクロールのモード。家庭では通常これでプレイ
よく画面を見てみると、画面が縦につぶれたような表示になっている気がします。
なのでゲームを中断しなにがおかしいのか確認することにしました。

最初に画面を比較する為ゲーム内のオプション設定にてアーケードモード(画面を縦にしてプレイする)にして画面を見てみました。
縦画面縦スクロールのモード。 モニタを縦にしてプレイする必要がある。
他の縦画面シューティングとはちょっと違う気がしますが、キャラクター表示に違和感はなくなりました。

アップスキャンコンバーターの解像度がおかしいのでしょうか?
設定を確認してみても1024×768になっているので4:3のモニタ用設定になっています。
試しにこのまま解像度をいろいろ変更してみました。
すると、横画面縦スクロール(家庭用モード)では1440×900にて良い感じに表示されるようになりました。
が、キャプチャボードではNTSC 480iで取り込んでいるのでキャプチャ側での変化はありません。
また、1440×900の解像度で横画面用のゲームを表示してみると横に潰されキャラクターがほっそりした変な比率になっています。
試しにコンバーターを通さず直接TVに繋いで画面を見ましたが同じでした。
という事は、コンバーターの解像度設定に問題があるんじゃなくてゲーム側に問題があると・・・


他のゲームで検証
紫炎龍はセガサターンのソフトをコレクションしている時に手にいれたもので、サターンが現役の頃にプレイした事はありません。
他のシューティングゲームは売らずに保管していたモノばかりで当時かなりプレイしたので記憶ではそんな違和感なかったんですが、ブラウン管TVから液晶TVに変わったことによる弊害があるのかもしれないので、念の為他のシューティングゲームも確認し検証してみたいと思います。

他の縦スクロールシューティングゲームを起動し画面を確認します。
東亜プラン最後のシューティング「バツグン」
まずはサターン版の「バツグン」を起動。画面設定はノーマルモード1を利用。
縦は勿論短いですが、キャラクターの比率はおかしくありません。
次に同ゲームの画面設定をアーケードモードにして縦画面プレイ用の表示にしてみます。
画面モードをアーケードにしてキャプチャ後に画像編集ソフトで回転させたもの。
縦に長くなりましたがとくにおかしな所はありません。

さらに別のゲームで検証してみます。
彩京の「ストライカーズ1945Ⅱ」を家庭用モード1でプレイ
コチラも家庭用モードのため縦は短いですが、表示されているキャラクターの比率は問題ありません。
このゲームもアーケード用の画面設定にしてみます。
画面モードをアーケードにしてキャプチャ後画像編集ソフトにて回転処理。
コチラも見た目はおかしくなく違和感のない画面です。


やっぱり紫炎龍がおかしい。じゃあ、何で?
紫炎龍がおかしいという結果になりましたが、じゃあなんで紫炎龍だけおかしいのでしょうか?


結局は移植度の問題?
なのかな?
当時のアーケードシューティングの移植に関してはゲーム機のスペックや当時のTV事情によりなかなか満足に移植出来なかったのではないかと思われます。

縦画面・縦スクロールシューティングはアーケード筐体では画面自体を縦にして表示出来たため画面の表示領域を目一杯使う事が出来ました。
そして、映像の表示方法も家庭用TVとは違いPCモニタと同じRGB信号を利用した高画質な表示が出来るモニタを採用しています。
それに当時は家庭で普及している画面サイズよりゲームセンターのビデオゲームの画面の方が大きい傾向にありました。

これを家庭用に移植するとなると家庭用テレビはアーケードのRGBモニタよりも画質が劣るのと、横画面のまま縦表示の全てを入るようサイズを縮小してしまうと、どうしても画面が小さくなるのと家庭用TVの画質が良くないことも相まって、表示キャラクタの視認性が落ちてしまいます。これではゲームになりません。

そして家庭用ゲーム機の標準映像出力はコンポジットでした。多少画質にこだわるユーザーはS端子でTVに接続し、RGB接続(純正のケーブルもありました)するユーザーもいましたが、ハイエンドの家庭用TVにしかRGB接続用の端子は装備しておらず、誰でも気軽に高画質化することは難しい時代でした。


メーカー苦肉の策、それは画面を切る!
この問題を解決するため、ゲームメーカー各社は縦画面・縦スクロールのゲームを移植する際に苦肉の策(と思われる)方法で縦画面・縦スクロールシューティングの移植をします。
その方法とは横方向の表示を出来るだけアーケードと同じにし、その分はみ出た縦方向の表示はカットしてしまうという技を使います。
まあ、ファミコンに移植されたものも同じように縦部分はカットされた独自の表示ですので目新しい方法ではありませんが。

この方法により表示キャラクタの視認性の問題はクリア出来ました。
が、また別の問題が出てきます。


画面を切ったら難易度が上昇しちゃったよ〜
縦にはみ出た分敵キャラが画面上から出現すると縦画面よりも自機との距離が短くなってしまうため、敵の体当たりや敵弾を避けるまでの猶予が縦画面よりも少なくなり、結果的にゲーム自体の難易度設定を同じにしても家庭用の方が難易度が高くなるという問題が出てしまいます。
これを回避するため、表示キャラのサイズ調整と敵キャラ出現や攻撃タイミングなどの調整をする事になります。
これで出来上がったのが、家庭用モードとなるわけです。
実際にプレイしてみると、確かにアーケード版とはキャラのサイズが変わっていたりと違和感はあるのですがアーケード版と違和感が少なくなるような調整が施されているので楽しくプレイ出来ます。


画面を切らないモードもあるよ〜
家庭用モードにはもう一つ別の家庭用モードを搭載してくれるメーカーもあります。
そのもう一つの家庭用モードは縦にはみ出た部分をカットせず、自機の移動に合わせて前後に画面をスクロールさせるモードです。
これにより移動範囲と画面比率を実際のアーケード版と同じにすることが出来ます。
が、前後に移動できるからといって画面外の敵に当たり判定がでるわけでもなく、また敵が画面外から攻撃してくることもありませんが、出現タイミングなどはアーケード版準拠になっているようです。

前に移動すれば敵キャラの出現が早まり家庭用モードよりもよりアーケード版に近い状態でプレイ出来るようになりましたが、縦シューティングではスクロールが元々強制な上、自分で画面をスクロールさせることも出来るようになってしまうので、背景の動きが速くなったり遅くなったりするので敵弾も速くなったり遅くなったりするような錯覚に陥りやすいので、慣れないと非常にプレイしづらいモードになっています。

このモードもアーケード版へ移植度を更に近づけるため考え出された方法だと思いますが、当時あまり良いという評判を聞いた記憶がありません。


もうテレビ転がしちゃえ!
さらにもう一つ、移植された縦シューティングゲームには大抵ついている画面モードがあります。
それはアーケード画面モードです。
これは読んでそのまんまのモードで、家庭用TVにアーケードと同じように縦表示させちゃうモードです。家庭用TVでは画面が横に回転させた状態で映し出されます。
このモードでプレイするのが家庭用に移植された縦シューティングを一番アーケード版に近い移植度でプレイすることが出来るモードになり、当時家庭機でプレイする縦シューユーザー間ではこのモードで縦画面プレイすることが憧れでもありました。

このモードでのプレイには憧れるユーザーは多かったと思いますが、実現までにはそれなりに苦労があるためなかなか手出しできません。
それは家庭用TVは縦画面に出来ないという制約があるためです。

なので、縦画面でプレイしたい場合はゲームセンターのビデオゲーム機に入っているRGBモニタだけを購入し、配線を施してプレイするという方法が一番正攻法であったと思います。
しかし、基本的にはブラウン管剥き出しのままになるので感電する恐れもあり扱いには細心の注意が必要であることと、映像信号を変換するための電気的知識が必要になるため誰でも出来るわけではありません。

ここまで大変な思いをしてプレイしたいユーザーはそれほどいるわけではないので、普通はもっと簡単に縦画面をプレイする方法を考えます。
それは・・・家庭用TVを転がしちゃえ〜です。
実際に家庭用TVを転がして縦画面プレイするユーザーもそれなりにいました。

しかし家庭用TVは画面を縦にした状態で置くことを前提に設計はしていませんので、これを無理矢理転がすと・・・
・廃熱がTV内にこもる為内部の回路が壊れる。
・衝撃を与えるとシャドウマスクがずれる。
・画面端の色がおかしくなる。
・TVから煙が出る、最悪燃える。
・TVを壊しておかんに怒られる。
という事が起きる可能性が非常に高くなります。
説明書にも火災の恐れがあると警告が書かれています。

壊れてもメーカーサポートは受けることができませんので、壊れるのを覚悟の上で縦画面化の猛者達は人柱となり、縦にしても壊れにくいモニターを自分たちで見つけ情報を共有していったのでありました。


液晶モニタの登場により縦画面問題は解決するも・・・
液晶モニタは廃熱がブラウン管よりも少なく、バックライトが冷陰極蛍光管からLEDにかわり更に廃熱・重量が減ったことにより液晶モニタをモニターアームに取り付けるてピボット機能(画面を回転させる機能)を使った縦画面化が容易に出来るようになったため、縦画面問題は解決しました。

しかし、時既に遅くシューティングゲームは高難易度化によるユーザー減少、一部上級ユーザーによるゲームセンターでの長時間プレイで採算が合わなくなったため、各ゲームメーカーはシューティングゲームを作らなくなってしまいました。
メーカーが作らなくなったので家庭用に移植されることもなくなり一般ユーザー間でシューティングの話題が出ることはほとんどありません。


で、紫炎龍はどうなったのよ?
いつの間にか移植の話から画面の話になってしまいましたが結局の所、紫炎龍に関しては移植度の問題だと思います。
昔のシューティングに力を入れ、家庭用への移植も積極的に行っていたメーカーは移植に際しての問題点をしっかり認識しており移植のノウハウもあったはずです。
ですが、紫炎龍を発売した童(わらし)というメーカーは設立も新しい上にシューティングゲームは家庭用も合わせて4本しかリリースしていません。
唯一シューティングゲームで評価されたのが「トリガーハートエグゼリカ」です。
シューティングも出来が良く、萌えキャラクターも相まって評価がよかったのかと思います。でも、出たのは紫炎龍の後です。
その為、縦画面シューティングを移植する際のノウハウが無いので画面を無理矢理縮小しただけの状態で移植してしまったんだと思います。それにより画面に違和感を感じるような出来になってしまったんだと思います。
また、アーケード版はサターン互換基盤であるST-Vでのリリースだったため、容易に移植が出来てしまったことが中途半端な移植になった原因の一つではないかと思われます。
オプション設定の少なさを見ても短期間・少ないお金で移植をしたのではないでしょうか?


さて、気になっていた事も解決したことだし、紫炎龍を最低でも1周クリア出来るよう練習したいと思います。

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